大橋の制作を終了させるためのテキスト

作家のためのステートメント

 

彼の制作するペーパークラフト作品シリーズは、表面的な見た目だけにフォーカスしており、深い思考や知識を必要とする問題に対しては批判的な立場を取ることなく、単にシニカルな態度に留まっている。この作品は、視覚的なエンターテイメントとしては魅力的かもしれないが、現実世界で直面する問題について真剣に考えることを鑑賞者へ促すことに至るとは限らない。そして彼の粘土の作品は、ペーパークラフトの作品の一面性を更に批判する意図で制作されているが、それは自己正当化のための言い訳とも捉えられる。
また、彼が描くピースシリーズについても、作家自身が持つ異性への欲望に対する自己嫌悪感や、男性的な視点で描かれる女性像への抗議や自己批判という、一見社会的に意識の高い動機があるように見えるが、それもまた単なる口実にすぎない。結果として女性像を単純化して描くことで、女性蔑視や性差別を助長する恐れがあるだろう。
彼は制作活動を終了させるべきである。

 


 

モナコGPトロフィー

2022/インクジェットプリント、糊、他
282mm×650mm×365mm/エディション・フリー

この作品は、作家がインターネット上の画像を元に制作したペーパークラフト作品であり、F1モナコGPのトロフィーを再現している。彼は趣味としてF1観戦をしており、同時に彼自身の男性性について考える題材としている。
彼はF1モナコGPトロフィーを、男性というアイデンティティを受け入れようとしている自分自身と、男性優位のスポーツであるF1のジェンダーバランスに対する問題とその改善のための活動を重ね合わせたメタファーとして制作している。
F1などのモータースポーツの選手や関係者の多くは男性で、今でも男性のスポーツという認識や意見がある。近年F1ではジェンダーバランスの問題への取り組みとして、チーム内の男女比を公開したり、女性選手の育成のためのカテゴリーを新設したり、様々な動きが起こっている。しかし本作は作家の個人的な問題意識と葛藤のはけ口に過ぎず、作品を通して具体的なアクションをするものでも、鑑賞者に促すこともない用に見える。さらに、作品にはF1の活動が汲み取れる要素がなく、一見するだけでは彼の個人的な問題意識と葛藤すらも見て取れない。
彼は制作活動を終了させるべきである。

 


無題(ピースシリーズ)

2019-2023/Procreate、iPad、インクジェットプリント
1000mm×1000mm/エディション・フリー

ピースシリーズは、作家自身の持つ異性への欲望に対する自己嫌悪感と、男性的な視点で描かれる女性像への抗議や自己批判を動機として制作されたものである。
この作品シリーズは男性的な視点で描かれる女性像であるにも関わらず、作家はそのような表現に対して批判的であると主張している。しかし結果的に、作品の中で描かれる女性たちは、男性的な視点から見た性的なオブジェクトとして描かれている。作品は、女性たちを単なるセクシャルな存在として描き、彼女たちの人間性や人格を無視しているように見受けられる。
また、作品に描かれる人たちは機械的なオブジェクトのようにも扱われている。彼女たちはVサインをしており、そのポーズは、女性たちが単なるポーズ取りの機械であるかのように描かれている。女性たちの内面や感情は、作品には存在せず、彼女たちをただのセクシャルなオブジェクトとして描いていることが明らかである。
このような作品は、現代社会において様々な背景や文化、ジェンダーの人々の権利や尊厳を尊重することが求められる現代において、完全に不適切であると言わざるを得ない。作家自身がこの作品に対して自己批判的であると主張しているにも関わらずこのような作品を制作し続けていることで、彼の主張とは逆の結果を生む恐れがあるだろう。
彼は制作活動を終了させるべきである。

 


UNO

2022/ジェスモナイト、パテ、アクリルインク、デカールシート、他
72mm×169 mm×45mm

マキタM697D

2022/スタイロフォーム、パテ、ジェスモナイト、アクリルインク、デカールシート、他
220mm×155mm×75mm

ACアダプタ

2022/紙粘土、石粉粘土、パテ、アクリルインク、デカールシート、他
70mm×45mm×45mm

 

これらの立体作品は、曲線的な形にデカールシートでディテールを貼り付けるという手法で制作されている。曖昧な形状にはっきりとしたディティールを貼り付け、ペーパークラフトの作品での直線的な形状に曖昧なテクスチャが貼られることとは対照的なプロセスで制作されている。しかしこのプロセスは、単にペーパークラフトと対比するためだけのものであり、新しいアイデアや主張を示すものではないだろう。
ペーパークラフトの作品で示されるような一面的で曖昧な情報から正確な判断をする危うさに対して、別の視点からさらに批判するためのツールとして制作されているものだが、ペーパークラフトの作品のウィークポイントを隠そうとしているようにも見える。
彼は制作活動を終了させるべきである。

 


リプロダクトチェア

2023 /インクジェットプリント、糊、他
462mm×806mm× 515mm /エディション・フリー

本作はペーパークラフトの技法でイームズチェアのリプロダクト製品を模したものである。
作家によると大量生産や消費社会を主題としている作品とされているが、その主題とメッセージが薄く浅い作品といえる。大量生産や消費社会への批判は、すでに何度も扱われてきたテーマであり、それをこのような構造の再生産という単純な方法で表現するのは、あまりにも浅はかである。リプロダクト製品については、すでに多くの批評や議論がなされており、この作品によって新たな視点が提供されるとは言い難いだろう。
彼は制作活動を終了させるべきである。