大橋 鉄郎 / アガサ・レイユ
2016
立体 / ペインティング
トレーシングペーパー、アクリル板 / トレーシングペーパー、アクリル絵具、蜜蝋
他者の公園や庭園での思い出と写真を集めて新しい記憶をつくり、栗林公園の中に持ち込む。さまざまな記憶が合わさり抽象化することで、別の場所の記憶が栗林公園の記憶とも混ざっていく。
記憶とは写真のようである。過去の物事を思い出すということはフォーカスを合わせる行為と似ている。
私たちは異なるプロセスと表現方法で、集めた他者の思い出のフォーカスをずらしていく事を試みる。
大橋鉄郎は、写真を元に立体作品を制作する。記憶の担保となっている思い出の写真は平面的で、記憶として残るイメージは自ずと平面的になる。その平面化したオブジェを写真を元にそのまま立体物へと戻す。記憶が写真へと置き換わる時、オブジェの裏側にはフォーカスが合うことはない。彼はこのようにオブジェの失われた記憶にフォーカスする。
アガサ・レイユは記憶の写真の中へ介入し、その記憶の中を探っていく。そして他者の記憶のイメージに自身の記憶のイメージを重ね合わせ、別の新しい物語を作り出す。彼女によって描きかえられた記憶は、彼女の記憶でも誰か他の人のものでもなくなる。この淡いぼんやりとしたイメージは、栗林公園と重なることで、また新しい記憶へと置き換えられていく。